マンションも10年を過ぎれば、リフォームを行う住戸が徐々に増えてくる頃合い。ふだん目にするところは新築同様になるが、目にすることのない排水管については、施工範囲や施工する技術者によって様々になってしまう。リフォーム前の配管は、ほぼ図面通りになっているがキッチンやバスルームのリフォーム後の配管は、排水管洗浄という観点からみるとアタリとハズレに分かれてしまう。アタリとは、リフォーム後でも配管形状が既存配管とほぼ同じ場合で、ハズレとは、配管形状が変化している場合を意味する。
マンションの排水管洗浄とは多くの場合、洗浄ホースを専有部の排水口から共用竪管、そしてそのまま下階方向へ挿入し1〜2F下の竪管継ぎ手まで洗浄する“ラップ工法”が用いられている。その理由は、洗浄ホースを専有部排水口以外には効率的にすべての共用竪管を洗浄出来る挿入箇所がない為、また、専有部配管も一緒に洗浄すれば詰まりやそれを原因とする漏水事故等を防げることになる。で、専有部から挿入するホースの長さは約10〜15mくらいになり、当たり前の話だが挿入したホースは引き抜かなければならない。1住戸当たりキッチン系統、ユーティリティ系統の2本として20〜30m、それを1日30〜35戸(洗浄チーム3人)としておおよそ600〜1000mの長さの排水管を洗浄することになる。
あまり考えたくない数値になりそうなのでハズレの配管に話を戻すが、なぜ配管形状の変化がハズレで排水管洗浄に直接影響するかというと、比較的新しいマンション(築年数10年以下くらいかな?)の配管は、曲がり部分にロングエルボを使用している建物が多いようで、そういったマンションの場合は洗浄ホースの挿入、引き抜きがとてもやり易い。しかし、多くのリフォーム業者はショートエルボしか使用しないのが実情で、そのショートエルボが厄介なのである。エルボとは配管を90°方向に曲げる継手でロングエルボは継手内面に角が無いが、ショートエルボの内面はしっかりと角がたっている。そのショートエルボが2つ3つ使用されてしまうとホース挿入にしろ、引き抜きにしろ、とても時間がかかってしまうし、場合によっては挿入すらままならないケースも出てきてしまう。
洗浄ホースの挿入具合は洗浄業者にとっても死活問題に関わる重要な事項のため、洗浄機器メーカーもそういった曲がりにも強い洗浄ホースを研究開発し、なかなかの評判を得ている様に感じる。弊社では10年前から管にやさしい樹脂製洗浄ホースにこだわって使用し続けてきた(当初は今よりも作業性も悪く耐久性も低く苦労が絶えなかった)。しかし先ほどのようなケースだと悪名高いSUSブレードホースでないと歯が立たない場面に出くわす事があるのが現状である。“配管にキズをつける”“削って穴をあけてしまう”たしかにそういう事例も多々あるし、私自身も目の当たりにしたこともある。それでも、いざという時にはSUSブレードホースしか選択肢がなく、洗浄業者の多くがまだSUSブレードホースを使い続けている理由の一つはここにあると感じている。
といっても、それを良しとしない風潮の中、コチラの意見ばかりで押し通せるものでもない。正直、このホースは作業者の手にも“あまり優しくないホース”なので、これを使わなくても済むような配管が少しでも増えてくれる事を願うばかりである。
ショートエルボ
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90度の曲がり継手で内側の角が直角になるためホース挿入、引抜きに支障が出る。
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ロングエルボ |
90度の曲がり継手だが内側の角がなくなるためホースの出し入れや引抜きもしやすい。 |
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SUSブレードホース |
メリット
ステンレスメッシュ製のため、作業性が良く、作業技術者の技量を問わず管内清掃が容易に出来る。
デメリット
材質上、ささくれ立ったステンレスホースが排水管接続部(曲がり部)での摩擦により配管を削ってしまう。 |
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樹脂製洗浄ホース |
メリット
材質が樹脂製のため、排水管を傷付けることなく、排水管の付着物のみを除去できる。
デメリット
樹脂製のため、配管内での摩擦抵抗が大きく、作業技術者の知識と経験が必要。ホースの耐久性が低い。 |
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