マンション共用部排水管の施工例 |
平成27年11月1日
斎久工業株式会社東京支社 リニューアル統括部第1リニューアル部 高柳 康典 |
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1.はじめに
マンション工事を行なう場合は住民が24時間生活している為、多くの施工条件があります。
また、「PS内にスラブが無い」「工事対象配管がPS内の奥にある」「既設配管があり作業スペースが確保できない」などの場合はさらに施工難易度が高まります。
今回紹介する事例は、このようなPS内に共用部排水管が有る改修工事の事例を紹介します。
2.建物概要
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名称 |
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某マンション |
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所在地 |
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東京都文京区 |
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規模 |
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地上8階・地下1階(127戸+管理室・集会室他) |
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竣工 |
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1962年 (竣工後52年経過) |
3.施工期間
着工 : 2014年 11月 〜 竣工 : 2015年 5月
4.建物設備概要
4−1 排水通気設備
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汚水・雑排水・合流方式 |
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3階〜8階 |
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自然流下 |
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2階〜地下1階 |
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地下汚水槽に流入後ポンプアップ排水 |
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使用管材(既設) |
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排水管 |
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排水鋳鉄管 |
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通気管 |
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硬質ポリ塩化ビニル管 |
5.工事概要(更新)
5−1 排水通気設備 (系統図参照)
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配管更生・更新工事 |
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排水立管 |
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更生工事
(一部更新) ※1 |
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排水横主管 |
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更新工事 |
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通気管 (排水立主管〜伸長通気管) ※2 |
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※1:既設配管が破損している箇所等は更新 |
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※2:ライニング作業の為、排水管と通気管の接続箇所を切断した箇所の復旧 |
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更生工法 (吸引工法) |
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ドリーム工法 |
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使用管材 (更新工事) |
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排水管 |
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排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DVLP) |
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通気管 |
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硬質ポリ塩化ビニル管 |
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更生工事 (概要) |
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排水管更生工事とは、既存の建築物に施工された排水管の延命対策として既存管の保全のために、配管を取外すことなく管内面の錆を除去し、防錆塗膜を形成することにより以後の発錆を抑制する方法であります。 |
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更生工事は、大きく分けて3工法あります。
[1]反転工法
[2]加圧工法
[3]吸引工法
それぞれ、特徴がありますので、今回の現場に合わせ吸引工法(ドリーム工法)を採用しました。 |
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ドリーム工法の特徴 1 |
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配管を取外すことなく、配管内部の付着物・錆をクリーニングにより除去、研磨後、配管内部へのライニングにより防錆塗膜を形成し、排水管の更生を図る技術であります。 |
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ドリーム工法の特徴 2 |
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工事は立て主管ごとに1日で終了し、その日から使用が可能。吸引技術により簡易施工、安全性も向上している。また、塗膜の耐久性が強いです。
工程としては、まず事前調査で残存耐久年数や汚れの具合を診断、準備工事の後、クリーニングにより管内の錆等を落とし滑らかにする。管路内検査の後、吸引力を利用して樹脂を流し込みライニングを施す。大型ドライヤーにより急速乾燥、品質検査・通水テストを終え、復旧。 |
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ドリーム工法の施工方法 |
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最上階の伸長通気・横主管・各階枝管と立管を縁を切り最上階よりライニング樹脂材を流入し最下階よりライニング樹脂材吸引します。
※ 各階枝管切断の為、専有部への入室が発生します。) |
(下図は、クリックすると大きくご覧いただけます。ブラウザの[戻る]ボタンで当ページへお戻りください。)
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更生工事(DREAM工法)フローシート |
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本更生工事は、DREAM工法(BCJ-審査証明-58)により実施。
使用樹脂は、排水ライニングに適した「ガラスフレーク入りビニルエステル樹脂」。 |





6.マンション改修における狭小PS内配管改修工事にあたり
PS内が狭く更新対象配管に手が届かない場合は、まず手前の配管を盛り替える事で、更新出来ないかを検討しますが、マンション工事の場合、毎日の生活が有る為、作業後に配管を仮復旧しなければなりません。
狭小PSの場合施工効率が悪い為、工期がかかり過ぎてしまい、排水制限が多く住民にストレスがかかり、クレームやトラブルにつながります。
施工速度を比較すると、更生工事は1日に対して更新工事の倍以上の施工できるため、ひとつの選択肢と考えます。
7.工事着工までの流れ
今回の物件の場合、竣工後52年経過している為、漏水が多発し始め住民が困り出したので、管理組合主導のもと、排水管改修工事の計画が始まりました。
当初は、全て配管更新で管理組合は、考えていましたが、PS内は手前に、給水管・給湯管・ガス管が有り、排水管まで手が届かなく配管更新が出来ないので、PS内排水立管は、更新工事となりました。
8.おわりに
更生工事を行う時には、既設配管が吸引に耐えられるか等の条件が有りますし、あくまでも延命ですので、管理組合等とよく話し合い工事を行なって下さい。
基本マンション改修工事を行う時は、24時間住民が生活し、居ながら工事になりますので、排水制限等の工程管理が重要になります。
今回のように専有部工事が発生する場合、各戸事前調査や試験施工を行ってから本工事になりますので管理組合と住民との密着なコミニュケーションが重要となります。
専有部は特に、些細な事でも住民に説明しないと、クレームやトラブルを発生しますので、施工業者と住民とのコミニュケーションが必要になります。
やはりマンション改修は、資産価値を上げるにも必要ですので狭小PS内での配管改修工事は今後も増えると思います。管理組合・住民・施工業者みんなで、工事を進めるという姿勢が大事だと思います。 |