MERMロゴマンション設備リニューアル&管理技術研究会

< TOP 

新着・技術情報
/コラム

セミナーご案内

ごあいさつ
設立趣旨
活動内容
本年度事業計画
活動報告
組織・会員構成等
会員名簿・事務局
会員専用ページ
 
セミナーご案内

【最新コラム】
■(2020.12.4)
『フェライト系ステンレス鋼鋼管SUS430LXTPを使用した雨水排水管の紹介』ノーラエンジニアリング株式会社 技術部 新井 隼介

【コラム
 バックナンバー】
■(2019.8.22)
『マンションの雨水排水設備の維持管理について』株式会社建物保全センター 営業部 橋 潤
■(2019.7.1)
『MERMコラム 「電子式満空試験機のご紹介」』株式会社小島製作所 開発部R&D課 課長 岩槻 剛史
■(2019.5.1)
『マンション設備リニューアルの課題』小池技術士事務所 代表 小池道広
■(2019.3.1)
『排水管更新工事の管種選択のポイント』フネンアクロス株式会社 板橋 修
■(2018.12.19)
『メータ配管ユニット「メータセットPS5」、樹脂管用ワンタッチ継手一体型回転チーズの御紹介』前澤給装工業(株)開発部住宅設備開発課
■(2018.11.5)
『マンションの大規模修繕工事で注意が必要なこと』株式会社 エー・アール・シーエンジニアリング 一級建築士事務所 石橋 正義
■(2018.8.6)
『株式会社ベン イノベーションセンター新設について』株式会社ベン 執行役員 技術部長 兼 センター長 竹山 隆裕
■(2018.7.1)
『配管の健康診断』株式会社協和日成 営業本部 建設営業部長 大開 栄一
■(2018.5.1)
『IPF床排水トラップ再生工法のご紹介』ジャパン・エンヂニアリング株式会社 排水管再生事業部 開発部長 山鹿 英雄
■(2018.3.1)
『排水管「負のスパイラル」解決に向けての取り組み』株式会社タイコー 代表取締役社長 米村 直樹
■(2018.2.1)
『マンション設備に関する標準管理規約の落とし穴 〜その工事、専有部分が含まれていませんか?!〜』戸部マネジメントオフィス 代表 戸部 素尚
■(17.11.1)
『樹脂系給排水管継手の破断・抜け出し現象とその対策』株式会社建物保全センター エンジニアリング事業部 清野 永朗
■(17.9.1)
『「標準的な長期修繕計画」の、資産価値向上・修繕積立金節約のためにできる工夫』戸部マネジメントオフィス 代表 戸部 素尚
■(17.7.1)
『マンション再生のキーワードは「シェアリングエコノミー:もったいないの精神」』積水工業株式会社 マンション管理士 金子 信次郎
■(17.2.20)
『次世代型配管システム「NFS工法」のご紹介』ノーラエンジニアリング株式会社 技術部 顧問 中野 和幸
■(16.12.18)
『給排水管リニューアル現場を取り巻く環境について』ブライトワークス株式会社 代表取締役 木村 章一
■(16.10.20)
『給湯システムに使用する自動弁について』株式会社ベン 鈴木 弘一
■(16.9.1)
『二層架橋ポリエチレン管「エルメックス 25A座付電気融着継手」のご紹介』三井化学産資(株) 管材事業部 エルメックス部 八木 靖浩
■(16.8.1)
『油圧式エレベーターのリニューアルについて』(株)エレベータシステムズ 営業部 古川 寛倫
■(16.5.1)
『大規模修繕工事に取り組む管理組合への提言』(株)建物保全センター 会長 熊谷 實
■(16.3.1)
『汚雑合流用スリム継手 「-1HQシリーズ」』 株式会社小島製作所 開発部 大浦 凌
■(16.1.1)
『メータセットPS4型』 前澤給装工業株式会社 特販営業部 集合営業課長 月見 礼吾
■(15.11.1)
『マンション共用部排水管の施工例』斎久工業株式会社東京支社 リニューアル統括部第1リニューアル部 高柳 康典
■(15.9.1)
『最近のマンションの給水設備改修工事の事例を通して』(株)エー・アール・シーエンジニアリング 一級建築士事務所 代表 石橋 正義
■(15.6.1)
『循環方式給湯設備用FD−11N定流量弁について』 株式会社ベン 取締役 販売促進部長 鈴木 弘一
■(15.4.8)
『給水管更生技術NPBラピッド工法の概要<高信頼性を誇るパイプライニングシステム>』 株式会社協和日成 建設営業部部長 大開 栄一
■(15.2.19)
『雑排水立て管更新工事<美白パイプ>・貫通部再生工事』 ジャパン・エンヂニアリング株式会社 排水管再生事業部 部長 青木 達也
■(15.1.5)
『床下土間排水管の改修について』 株式会社タイコー 専務取締役 米村 直樹
■(14.11.1)
『「マンション改修」は新たなステージへ』 積水工業株式会社 代表取締役社長 マンション管理士 金子 信次郎
■(14.9.1)
『修繕積立金増額のための手引き 〜実際の事例から〜』 戸部マネジメントオフィス マンション管理士 戸部 素尚
■(14.7.1)
『受水槽跡の有効利用について』 斎久工業株式会社 第一リニューアル部 課長 手塚 恵之
■(14.5.1)
『考察「建物の長期耐用化」』 有限会社巌技術研究所 土井 巌
■(14.4.1)
『給排水設備の専有・共用一体的改修について』 株式会社長谷工コーポレーション 山鹿 英雄
■(14.3.1)
『マンション管理に3D図面を』 松浦 房次郎
■(14.2.1)
『水−温水ミキシングバルブの性能特性と使用例』 株式会社ベン 小松 達也
■(14.1.1)
『二層架橋ポリエチレン管 「エルメックス 鋼管接続用継手」のご紹介』 三井化学産資株式会社 管材事業部 エルメックス部 谷内 飛龍舞
■(13.11.26)
『地震リスクについての考察』 沼田一級建築士事務所 代表 沼田 俊秀
■(13.11.1)
『水道用高密度ポリエチレンパイプ(HPPE)による給水配管のリニューアル』 冨士機材株式会社 設備営業部 課長 山村 尚弘
■(13.9)
『給湯管更新提案資料(給湯管漏水対策)』 ブリヂストン化工品東日本株式会社 リニューアル営業課
■(13.9.1)
『専有部分の維持管理について』 株式会社建物保全センター 保全部係長 檜谷 史夫
■(13.7.30)
『ジャッキアップスリム短管工法/JUST工法』 株式会社小島製作所 開発部 部長 加古 洋三
■(13.7.1)
『QSJC回転ヘッダ』 前澤給装工業株式会社 営業推進部 特販部 設備グループリーダー 富田 邦明
■(13.6.1)
『サンプリング管調査(抜管調査)』 株式会社ラムダコーポレーション 代表取締役 東海林 利男
■(13.5.1)
『マンションの共用部、専有部の改修工事例』 斎久工業株式会社 設計見積部 企画課長 手塚 恵之
■(13.3.30)
『ビルにおける空調ドレン管の洗浄工法のご紹介』 東京容器株式会社 常務取締役 山尾 隆文
■(13.3.1)
『集合住宅の設備騒音の困った出来事』 株式会社エー・アール・シーエンジニアリング 一級建築士事務所 代表 石橋 正義
■(13.2.1)
『ノーラコ−ティング鋼管(EVOH樹脂コーティング鋼管)のご紹介』 ノーラエンジニアリング株式会社 技術部課長 中島 淳
>> 2012年以前の バックナンバー
 一覧へ

新着・技術情報/コラム

修繕積立金増額のための手引き 〜実際の事例から〜

平成26年9月1日
戸部マネジメントオフィス マンション管理士 戸部 素尚

 

1.はじめに

 

 修繕積立金は、ほとんどのマンションで新築時の金額設定では、どうしようもなくなってくる時期が必ず来ます。新築時には、住宅ローンの申し込みもあり、月々の固定経費は安くする方が買主が多くなるあるいは売主として売りやすいといった理由から低く設定されています。

 そういった環境にも関わらず、増額になることを知らずに購入している方がたくさんいます。また、管理費と修繕積立金の違いさえも理解していない方も多くいらっしゃるのが現状です。

 1回目の大規模修繕が完了する頃、概ね築10年程度になれば、修繕積立金が足りなくなることが判明し、どのようにマンション運営を行っていくかをしっかり検討するようになります。その時に理事になった方のために、修繕積立金を増額するために行っておくことがよいことを教授します。

 

 

2.修繕積立金って?

 

次のグラフをご覧ください。

修繕+改良=改修

 「修繕」積立金ですから、修繕のために積み立てるお金です。修繕というのは、当初(新築時)の機能・性能に戻すために行う工事のことです。しかし、マンションというのは、時代と共に消費者のニーズが高まり、それに伴い法令も改正され、社会的に要請される設備や環境が増加していきます。たとえば、築年数の古いマンションではエレベータがない、自動ドアがない、オートロックではない等のマンションがまだまだあります。新築時の性能に戻すだけでは居住者の利便性には変化がありませんが、やはり時代のニーズは取り入れていきたいものです。

 そういった、修繕をするための計画を、長期修繕計画といいます。どの設備に、どの数量、どんな直し方をするとして、いくらくらいかかるのか、そしてそれはどんな周期で直していくのかをまとめた表です。加えて、資金計画を合わせます。当初のままの修繕積立金額で足りるのか足りないのか、足りないなら、いつ、いくらくらい増額しなければならないのかを検討します。

 そして、長期修繕計画の骨格を作成したら、次には、グラフ中にもありますが、「改良」について検討します。[1]設備やデザインの陳腐化を払しょくするため、グレードアップをするための積立、[2]法令改正や増税による負担増に対応するための積立、[3]地震や火災、水害等の突発的な災害による復旧の費用をするための積立、等余裕があれば、すべてを網羅して計画を作成したいものです。

 

 

3.修繕積立金増額時に検討しなければならないこと

 

 修繕積立金を増額する際には、必ず長期修繕計画が、現状に沿ったものかどうかを検討しなければなりません。現状に合っていなければ、無駄が生じますし、項目に過不足があれば、せっかくの積立も、目的がない積立になってしまいます。

 次に、一番大切なことですが、各住戸がいくらくらいならば増額に対応できるか、です。各戸とも概ね築10年くらいたちますと、新婚でマンションを購入した世代が多いと思いますが、子育ての真最中で学費や教育費にお金がかかる時期です。給料も右肩上がりの時代とは違い、据え置きあるいは下がっていく時代ですから、月々1万円の増額でも世帯に与えるダメージは深刻な問題となり得ます。

 よくあるのは、各戸の生活とは切り離し関係ないとして、管理組合の方が大事だから増額を認めなさいと上からの態度で接している役員さんあるいは管理会社の方がいらっしゃいますが、それは違うと思います。各戸の生活があって初めて共有物であるマンションの共用部分が成り立っているので、私としては一人一人と向き合って、生活を守りつつもマンション全体を維持できる範囲で増額を可能にすべきと思います。まずはアンケートを取り、説明会を行い、皆の生活レベルがどの程度なのかを把握し、さらに修繕積立金についてきちんと理解できているかを把握したうえで、金額の検討に入るべきです。

 

 

4.増額に関するよくある反論(=越えなければならないハードル)

 

 ここからは、事例でお話ししましょう。

 

・修繕積立金を増額するためには、総会の決議が必要です。総会に出すためには、長期修繕計画を見直し、その結果いくら足りなくなるため、いくら増額させてほしいという議案を作成しなければなりません。ここでよくあるのが、長期修繕計画がそもそも合っているのか?という検証がなされておらず、信頼性において不安があるという反論です。多くは管理会社が作成し提出していますが、管理会社もその中身について住民の皆さんに詳細に説明するような説明会を開いているケースが多くないようです。たとえ、行ったとしても専門的な事項が多いために出席率はあまり多くないのが現状です。

 私は、管理会社が長期修繕計画を作成する以前に、ミスが多発していたために、長期修繕計画の中身についての信頼性が揺らいでいたため、検証をしてほしいという業務を受けたことが数件あります。

 結果としては、70点程度で、致命的な計画の間違いはないものの、項目漏れや、周期相違、修繕方法の選択ミス等は散見されました。管理組合には、一つの成果物を提出するだけではなく、2で記載したような選択肢をもっと提供して、管理組合の皆さんにもっと親しみやすい計画または検討しやすい計画を提出すべきであったという思いがあります。

 検証を行った結果、70点であるが、信頼性に足る計画であるとお墨付きを与え、理事会として住民からの質問には、作成者である管理会社とマンション管理士とでその内容の適正性について支援を致しましたことで、総会の決議を取りやすくしたという事例があります。検証を行うことで、理事さんも理解が深まり、計画とはこういうものであったかということで、知識が増えてよかったと感じている方が多くいました。

 

・次に、各戸の生活を見直すことを、管理組合として支援する方法があります。実際に行った事例では、住宅ローンの見直しでした。住宅ローンは、バブル期に比べて低金利になっていますので、借り換えをすれば支払額が数万円下がるケースもあります。金融のコンサルタントと一緒に、マンション一戸一戸の住宅ローン借り換えの相談に応じ、また、団体信用生命と民間の生命保険会社との比較等を徹底的に行い、月々の費用を抑え込む方法を取りながら、管理組合が住民一人一人の生活にも支援していくという姿勢を含めて、理解をしていただき、総会承認を得たケースもあります。

 住宅ローンの借り換えや団体信用生命の外し方等、専門的な知識やノウハウが必要であり、専門家が管理組合を支援できたケースであったと思います。

 

・最後に、管理費の見直しです。管理費は、月々あるいは毎年の費用として必要経費として消えていくものですが、新築当初に管理会社と契約したままの内容で進んでいるケースが多くあります。その内容が本当に合っているものかを検討することは少ないです。たとえば、定期清掃ですが、多いマンションでは、2か月に1回、マンションのエントランスの床面だけをずっと続けているわけですが、同じところをきれいにしたところで、他の箇所も目立ってきますから、まんべんなく無駄なく清掃をすることで、マンション全体が清潔になっていくものと考えられますが、当たり前のように、悪く言えばバカの一つ覚えでエントランスの床面だけを契約だからとずっと行っている管理会社が非常に多いと言えます。

 そういった、管理会社との契約内容を見直すことや他社の見積りを取得して比較を行う、管理会社に任せなくとも大丈夫な契約を直接発注としていく(ただし、デメリットもあるため注意が必要です)等の方法を取り、管理費を下げた分を修繕積立金に回すといった手法もよくとられます。

 結果として、サービスレベルが落ちないあるいは上がって管理委託費が下がったところもあります。もちろん、委託費だけではなく、保険契約や電気代、電話代、植栽管理費等節約する方法がある勘定科目もありますので、総合的に見直すことが大切です。痛みを伴う削減例として、サービスが落ちるが、住民の汗でそれをカバーしようとするケースもありますので、マンションによって様々な方法が存在します。

 

・おまけとして、運用をするというのも大切なことです。マンションの場合、収益性よりも安全性を最優先にしなければなりませんので、普通預金や定期預金が主な運用先となります。普通預金は、決済性預金と言って、利息が発生しない代わりに全額がペイオフの対象となるもの(ペイオフ=全額保護、ペイオフ解禁=定額保護への移行)です。このままでは利息が発生しませんから、運用をするために、[1]積立損害保険、[2]すまい・る債、[3]国債・都債、[4]定期預金・定期貯金等を複数運用することで、資金を増加させることができます。ただし、長期修繕計画をよく見て、資金を使用するであろう期間前に解約あるいは満期が来るようなプランを立てて運用することが大切です。

 

 

5.結論

 

 修繕積立金を増額するという総会議案を通すためには、既述の通り

 

  1. 長期修繕計画の適正性の確認
  2. 各戸の生活の確保のための支援策
  3. 管理費の見直し
  4. 修繕積立金の運用

があり、すべてを実施せよとは言いませんが、理事会がこれらを検討して、区分所有者に対して「ここまで努力しましたが、これ以上は無理ですから上げさせてください」といった姿勢・努力が総会の際に応援という形で反映してくると信じています。

 

 そしてこれらは、一部を除き管理会社ができない業務です。

 

  1. 長期修繕計画の適正性の確認 …自社で作成したものは第三者検証ができません
  2. 各戸の生活の確保のための支援策 …管理会社は専有部分支援は契約にありません
  3. 管理費の見直し …他社の見積りを取ることができません
  4. 修繕積立金の運用 …アドバイスや計算をすることができます

大切な 1. 2. 3. は、管理会社の言いなりではどれも適正に実施することができませんから、管理組合の自主性を発揮して行わなければならないことを、ぜひ実行していただき、当初から低めに設定されていた修繕積立金額を適正額に戻していただければ幸いです。

 
TOPへ  このページ上へ

Copyright(c)2005 Mansion Equipment Renewal & Management technical research meeting All rights reserved.