平成26年11月3日付日経新聞朝刊一面でUR法改正案提出に関する記事が掲載された。
この改正法案は、現在では団地の建替えは建替え前と同じ敷地か隣接する土地しか活用できなかったものを、離れた土地(飛び地)を活用することも可能にするものだ。簡単な例を挙げると、郊外の団地型マンションの建替計画で、移転先に駅近の遊休土地を活用し、高層建物を建築、移り住むケース。元々の土地は利用形態等の変更も含め、再構築するのだろう。そうなると行政側のサポートもかなり必要になってくる。
こういった計画を実施する為には、様々な方面の権利者の合意が必要になるが、コミュニティの維持という大きな課題に対して、行政側も相当の覚悟で臨むべきだという、今までにない本気度を感じ取ることができる。
マンション改修に関わっている我々建設業者も単に建築という側面だけで、修繕工事を提案する時代は終るのではないであろうか。
設備改修工事が実施される場合、同じ場所に住み続けて、その建物を利用し続けるということが大前提となる。建物寿命60年に至るまで、その建物を延命することが修繕工事の大きな目的だ。マンション自体のコミィニティの維持については、我々は考えることはない。
考えることは計画性と公平性だ。
分譲マンションが開発され何十年も経過し、社会環境、マンションの住民の価値観、周辺環境、建築技術、それぞれ大きく変化している。その大きな変化のトレンドの一つが少子高齢化だ。この流れを受け、いわゆる郊外の団地型マンション等においては、高齢者の一人暮らし化、空室率の上昇が高まりつつある。空室率の上昇は単に少子高齢化が原因ではない。建物機能そのものの劣化や立地条件が大きく関わっている。例えばエレベーター設備が無いとか、全住居が同じプランとか、環境に配慮した設備が設置できないとか、フローリングに変更できないとか、様々な制限を法律面、規約面、技術面においてマンションの住民は受けることになる。昔は許容できたターミナル駅からのバス通勤も、都心の利便性との比較において大きなマイナス条件になってしまった。
上記のような機能劣化や立地条件等を改善解決することは非常に難しい。解決が難しい課題は当然先延ばしにされる。そして資産価値そのものは低下し続けるのです。空室率の低下は管理費の未払い・不足を引き起こし、管理機能そのものの低下を加速させてしまう。
いわゆるリゾートマンションの現状をみれば、首都圏にあるといえども、問題を先延ばしにするマンションが辿る行き先は想像できる。私共の会社で所有するリゾートマンション(総戸数200世帯、築30年前後)では、管理費の滞納額が積み上がり、部屋の玄関扉には、管理費滞納分の督促状が何枚も貼られ、空き家の状態が何年も続いている住居が2割以上も存在する。管理組合として、管理費の滞納分の回収の為、対象住居の差し押さえと競売開始を決定するが、再販価格が「ゼロ」以下という現実に、問題先送りという選択肢しかなくなる。
この状況下においても、長期修繕計画に沿った形で共用部給水管更新工事が実施されようとした、死に票になることを理解しつつ、反対票を投じる私でした。使うあてのない、設備を更新することはオーナー側としては賛成できなかった。
あと数年もすれば、管理費が枯渇し、管理会社にも見捨てられ、管理会社もない非居住用マンションができあがる。これが悲しいリゾートマンションの現実だ。
人が住み続けて初めて建物資産は維持することができる。その為には、今までの発想に囚われず、冒頭で挙げた法改正のように、新たなる視点で資産管理計画を考えなければならない時代が来る。
改修工事にも新たな視点が必要な時代が来ている。壊れたから、壊れそうだから、長期修繕計画で計画されているからと、共用設備の修繕工事に着手することは、本来の資産価値維持の側面からすると問題がある。今後の20年を考え、建物機能に絶対に必要な設備の 要件を満たす改修工事を検討し、検討してもなお、問題が解決できる見通しが立たない場合、建替も視野にいれた修正計画と資金計画を準備する必要がある。
これかの時代、マンション改修コンサルタントについても、単にマンション改修専門家という立場で組合側と協議するのではなく、長期的な資産価値維持の専門家として、知識・ 経験を積んでいかなければならない。より個人の権利を調整する場面が増える可能性があるので、第三者的な公平な立場をより意識する必要もでてくる。
途中、リゾートマンションの現状に触れましたが、全てのリゾートマンションが同じ状況ではないと思います。過激なフレーズを使用したことについてはご容赦下さい。現況の管理状態を非常に心配していることを強調させて欲しかったのです。
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