一昨年の紅白歌合戦で上村花菜さんが歌う「トイレの神様」が大人気を博した。トイレ〜にはそれはキレイナ神様がいるんでえ〜ということである。きれいで清潔なトイレは、利用する人にとってもまた、掃除する人にとっても大変喜ばしい話である。
そういえば、ここ数年の問に見違えるように改善された施設で、最も顕著なものはトイレである。駅のトイレ、公園の公衆トイレなど挙げればきりがない。都会で目につくものは皆きれいになったといっても過言ではない。トイレそのものが社会的な陳腐化を背景に一斉に改善され、性能向上したものと考えられる。この中で、室内のデザインと併せ便器の形状・性能などは素晴らく向上した。大便器など、従来一回の排水量が13リットルであったものが5リットルほどに半減させて、しても便器を汚さずにきれいに洗い流してしまう商品が実用化されている。
このように、トイレにおける機器単体の改善は素晴らしいものがある。しかし、よく見ると、便器はきれいになっているが、なんとなく換気が悪く、臭いの残るトイレもある。リニューアル設計に何か問題があるのではないかと勘繰りたいところである。
建物といえば、長寿命の代名詞のような言葉である。リニューアルに当たっては、寿命の長い建物や既存の仕様による排水設備などはそのままにし、新しく開発された新型の節水便器を取り付け使うことも多々あると思われる。このような場合、便器と排水管の特性が一致しないと厄介な問題を取込むことになる。トイレとしてのシステムを完全なものにするためには、新しい便器と既存の排水設備の特性を一致させ、それぞれの機能が十分に発揮できるようにしなければならない。例えば、水量の少ない便器では、汚物をスムースに流す排水管の役割が阻害され、また、換気システムでは、換気の音はするが、空気が空回りしていて臭いがぬけないようなことにもなりかねない。素晴らしい効率のよい器具があるからといって、安易にそれだけを取り換えることは機能不全の問題を取り込むだけで、逆効果になる危険性があることを認識しておく必要がある。
建築物は長期間供用されるものであり、そのような狙いで作られている。設備においても、寿命の長い機器(サブシステム)や寿命の短い機器(サブシステム)が結合され機能するようになっている。長い供用期間の間には、古いサブシステムと新しいサブシステムが結合される機会に常に遭遇することにもなる。
技術はとどまることなく前進している。新しい高機能サブシステムと、結合する従来のサブシステムとの整合性のチェックは欠かせない内容であり、もし不整合が見つかれば、既存システムの改善か、或いは既存システムでまとめるかの判断が重要になる。これがうまくできない限り、見栄えは良いが問題の残るシステムとなってしまう。
問題を残した設計者達は、なんとかしてほしいと神様にお願いしたいと思うが、理に合わない設計には神様も応援してくれまい。
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