連結送水管とは?
高層ビルやマンションなど、消防ポンプ自動車からホースを伸ばして消火活動がしにくい建物内に、配管設備と放水口を設けて、火災現場に近い場所での消火活動をしやすくした設備のことです。建物の1階部分にある消防車から強制的に加圧した水を送るための送水口と、各階にある放水口を、配管(送水管)でつなぐことから「連結送水管」といわれております。主に初期消火を速やかに行うための設備。高層マンションなどには必ず設置されています。
マンション等に設置される連結送水管は、火災の際、消防隊が使用する設備です。いざという時に、支障なく消火活動が出来るように、配管の誤接続・漏水・バルブのゆるみ・離脱・損傷等がないように、確実な事前チェックが義務付けられています。
今までの連結送水管
今までの連結送水管設備では、配管材質がSTPG370sch40(JIS G 3454)と呼ばれるパイプ(圧力配管用炭素鋼鋼管)を一般的に使用してきました。配管自体も肉厚があることから、端部にネジ加工を施し、配管同士をつなぎ合わせていく方法や、フランジやメカニカル継手で接続していく方法など様々ですが、殆どの建物が最初のネジ接続で配管されています。
しかしながら、建物竣工後の老朽化による配管内部腐食トラブルや漏水事故等も発生していることから、新材質への転化が必要になってきております。
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STPG370sch40(JIS G 3454)
メカニカル継手で施工中 |
STPG370sch40(JIS G 3454)
施工後 約14年 |
連結送水管のステンレス化へ
ここ近年の大規模・特殊な建築物の増加にともない、消防用設備に対して新技術活用ニーズが高まりました。また、消防法の改正に伴い評価制度も整備され、ステンレス配管システムが新たに認可されることとなりました。
では連結送水管をステンレス化すると、どの様なメリットがあるのか?
まず、最大のメリットとして、耐久性に優れる、ということです。
ステンレス配管のシステムとしての耐用年数は、メカニカル継手に使用されるゴムパッキンの耐用年数で決まると考えています。種々の加速実験から80℃で40年以上、70℃で80年以上の耐用年数が導かれております。ただし、今回の消防設備配管としては常温を考えれば良く、25℃での耐用年数としては100年以上という値が得られます。正しく使えば半永久的、という言い方ができると思います。
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ステンレス鋼管(SUS304TPD 20SU)
竣工後 約27年間使用 |
ステンレスの特徴
ステンレス鋼とは鉄に少なくとも10.5%以上のクロムを含有した合金鋼の総称です。
鉄の最大の弱点である「さび」を防止するように改良されており、耐食性・耐久性・意匠性・耐火性・低温特性・加工性などで非常に優れた特性を備えています。またメンテナンスが容易であることも大きな特長です。
環境に対する社会の関心が高まるなか、ステンレスは100%リサイクル可能な材料として高く評価され大変注目されています。
ステンレスが「さびにくい」しくみ
鉄にクロムを添加するとクロムが酸素と結合して鋼の表面に薄い保護皮膜 (不動態皮膜)を生成します。この不動態皮膜がさびやよごれの進行を防ぎます。またこの不動態皮膜は100万分の3mm程度のごく薄いものですが、大変強靭で、一度こわれても、周囲に酸素があれば自動的に再生する機能をもっています。
<言葉の意味>
ステンレスとは「Stainless」のことで、「さびない」という意味です。従って日本では古くは「さびない鋼」とか「不銹鋼」という名で呼ばれていましたが、最近では「ステンレス鋼」にほぼ統一されました。名前の示す通りステンレス鋼は一般の鋼に比較すると極めてすぐれた耐食性を有する材料ですが、特定の環境、使用条件の下では「さびる」ことがありますので正しい使い方をする事が大切です。
ステンレス鋼管はどのように使用(施工)するのか?
まずステンレス鋼管は、工場プレハブ加工(ステンレス加工管)をお勧めします。
工場プレハブ加工(ステンレス加工管)にすれば、
1、 |
工場溶接でいわゆる「工場品質」を反映することができます |
2、 |
工場でプレハブ加工するので、工期のコントロールや短縮が可能 |
3、 |
現場作業量を削減でき、また、薄肉化のできるステンレス鋼管なので、プレハブ加工しても部材が軽量であり、安全性向上につながる |
4、 |
火気不使用ですので、火災の心配がいらない(更新工事等に最適) |
5、 |
溶接ヒュームで現場作業環境が改善される |
といったメリットがあります。
プレハブ加工(ステンレス加工管) |
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納入時 |
施工完了時 |
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免震装置廻り配管 |
屋上放水口廻り配管 |
まとめ
近年、消防法の改定により、連結送水管設備を設置した建物で10年以上経過している場合は、3年毎の点検が義務付けられています。
その際、「送水口本体・配管・接続部分・弁類等の変形、漏水等がないこと。」というのが判定基準となっております。
しかしながら、現状は配管内部が錆で覆われ、継手箇所からは漏水が発生している状況です。こういった配管自体の老朽化を未然に防ぐ為にも、より耐久性に優れた素材である「ステンレス」を効率よく使っていただくことにより、安心できる血管(配管)を持つ健康なマンションを維持管理できるものと考えます。
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