先頃、(社)日本設備設計事務所協会創立40周年の記念式典が開催されました。同協会は1966年社団法人の認可を受けて以来、設備設計技術者及び設備設計事務所の社会的地位の向上や設備設計業務の質の向上に努めてきました。が、昨年11月に構造計算偽装問題が発覚し、建築物の耐震性に対する不安と建築界への不信を広げ、これらの諸問題に対応するため、国土交通省は再発防止策と称して、建築確認時の構造設計図書の審査方法の厳格化、指定確認検査機関に対する監督の強化、建築士に対する罰則の大幅な強化等を内容とする「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案」を先の国会に提出し、6月に成立したところです。
また、8月31日には、社会資本整備審議会より、建築士制度の抜本的な見直しとして現在、建築士法等の改正作業に全力を挙げ取り組んでいます。
この中には、設備設計を依頼する際には、新設される設備設計一級建築士により設備規定の適合チェックがされた設備設計図書の納付を義務付けております。
過去となったのか?建築設備士!
昭和58年に建築設備士の資格が設けられた際、設備の重要性・必要性が高まり、設備の分野は一級建築士の範囲ではなく、その専門性が重要だという位置付けに発足されたはずでした。にもかかわらず、資格に法的位置付けがなされず軽視されてきました。今回の改正案でも建築設備士が生かされていないのが現状です。
単なる制度面の遅れか?
千葉大学教授 川瀬貴晴氏は、制度面での遅れはありますが、設備設計の必要性はますます高くなってきます。さらに能力を磨いていくことで自然と制度はついてくると楽観的にとらえられています。
建築設備士は単なる縁の下の力持ち?
必要が出て建築設備士をつくられたはずですが、一級建築士のアドバイザーのような位置付けだけで、公共建築の場合、管理技術者、主任技術者には建築設備士を配置するよう条件がつけられています。
この現状もどのように変化していくのかも不明となっております。
実態に即した制度を!
今設備は多様化、高度化へと変化しその速度も速まっております。それに一級建築士が対応できるか、あるいは建築設備士のアドバイスを受けただけで対応できるのか、実態と制度が合っていないのが現状です。実際に設備設計の世界に若者の算入は皆無に等しく、後継者問題にも直面し悩みつづけています。
安全・安心という問題は様々な分野で言われていますが、国民の安全・安心、生命・財産を守るという観点から建築を考えた場合、建物をまとめるのは一級建築士で良いのですが、建築設備士をしっかり位置付けることが必要です。
実際、3万人を超える建築設備士を今後どのようにするのか。
今回の法改正案で最も影響を受けるのは設備設計事務所です。今後の運用面を詰める段階で国は経営上の点も含めて十分な配慮を行うべきと考えます。
平成18年11月24日 土井 巖
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