■建物を大切に
日本の分譲マンション総戸数500万戸のうち、築30年以上を経過した高経年マンションは50万戸を超え、5年後の2011年にはいよいよ100万戸を突破することになる。高齢化の問題は、人間だけではない。
特にこれからの時代、全国に溢れるマンションストックを「ゴミ」にすることは決して許されない時代となる。そのためには、「経年劣化を抑制しながら、建物の寿命を延ばし、資産価値を高めていく」ことが必要だ。
それにはどうすれば良いのか?やはり「維持管理」が重要ということになる。維持管理について日頃から意識していくことで「自分と建物との距離」が短くなる。その結果、建物の寿命は確実に延びる。精神論的な言い回しだが、筆者はそうゆうものだと確信している。
■改良・改修とマンション再生
マンションの質や価値を長期的に維持し、物理的劣化と相対的劣化を同時に抑制していくには、その時代の生活水準を考慮した『グレードアップ』を行い建物の性能を上げる必要があるが、その実施のタイミングとしては特に大規模な改修工事を実施する築後20〜30年を経過した頃が現実的である。
設備的な内容としては、下表に示すようなグレードアップやシステム変更を配慮した計画を立案することが望まれる。これらの項目についても長期修繕計画と平行して検討していく必要がある。
さらには、建物単体の保全ではなく周辺環境・地球環境をも配慮した「まちづくり」としての建物の機能を考え、その建物の役割やあり方を考慮したマンションに再生していくことも必要だ。キーワードは、安心(防災、セキュリティ)・安全(水質、耐震)・環境(低環境負荷、リサイクル)などといった所だ。
表 マンションを長持ちさせるグレードアップ工事のメニュー例
設備分類 |
修繕的な発想 |
現時点でのグレードアップ的な発想 |
給水設備 |
- 給水管の更生(ライニング等の延命工法)
- 給水管の単純な取り替え
- ポンプのオーバーホール
- 水槽の塗装
- 不具合箇所の補修
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- 給水管材の変更(高耐久、鉛レス、リサイクル等)
- 給水システムの変更
- 耐震性能の向上
- 機器の防振、防音対策
- 省エネルギー機器の導入
- 節水、災害、再利用対策
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排水設備 |
- 排水管の更生(ライニング等の延命工法)
- 排水管の単純な取り替え
- 不具合箇所の補修
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- 排水管材の変更
- 排水システムの変更
- 排水性能の向上
- 耐震性能の向上
- 排水流水音の低減化
- ディスポーザーの適正導入
- 排水の浄化
- 災害、再利用対策
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給湯設備 |
- 給湯管の単純な取り替え
- 熱源機器の単純な取り替え
- 不具合箇所の補修
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- 給湯管材の変更
- 熱源システムの変更
- 省エネルギー機器の導入
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消火設備 |
- 消火管の単純な取り替え
- 消火機器の単純な取り替え
- 不具合箇所の補修
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- 消火管材・器具の変更
- 現行法規への対応
- 防災、災害を特別配慮した改修
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ガス設備 |
- ガス管の単純な取り替え
- ガス機器の単純な取り替え
- 不具合箇所の補修
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- ガス管材の変更
- ガス供給能力の向上
- 防災、災害を特別配慮した改修
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(写真 ドイツ/ライネフェルデの環境配慮型再生団地例)

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